映画解説『パラサイト』うるせえ、山水景石ぶつけんぞという気持ち

あの石なんの石?“パラサイトの石”の意味合い

“パラサイトの石”は、成功者から与えられた富そのものだ。

友達のミニョクから石を受け取ったとき、ギウは「この石は象徴的だ」と述べている。これは与えられた富であって、格差の象徴として登場する。

パク社長の家の地下で暮らすブキミさん(ムングァン)は、彼らを崇拝する。そしてその暮らしを害するキム一家に殺意を向ける。ギウが手にしたはずの山水景石を奪われ、ボコボコに殴られる。

与えられた石はなにかを奪って流れていく

「無敵の人」という言葉があるけれど、失うものがないから破滅的なことができるということではない。ブキミさんは自らの米櫃にわいた虫を払おうとしただけだ。無敵の人の凶刃は、そこまで悪事を働いていないギジョンへと向かってしまう。たまたま与えられた富は、誰しも簡単に奪われ、失ってしまうものだったのだ。

上流から流れてきた石は、手にした人の何かを奪って下流へと流れていく。何もない状態だから得られた仕事のはずが、家族の命を失ってしまうという大きなしっぺ返しを受けることとなってしまった。

表出した格差と優雅な人たち

温厚だった父ギテクの怒りは、ブキミさんに向けられたものでも、パク社長にでもない。

地下でうごめいている”よくわからない不毛な”争いは、ふとした拍子に地上へと表出していく。すると、もともと純粋で品がよかったはずの地上の人たちも、突然の醜悪なできごとに思わず鼻を摘んでしまう。あれだけ優雅で優しかったパク一家でさえ、だ。

白日の元であらわになった格差に対して、父ギテクは衝動的な怒りを覚えてしまったのだ。ギウの頭から血が広がり、床を覆う梅シロップと混ざり合わずに広がるさまは、二つの隔たりを象徴的に表している。