[イミテーション・ゲーム]アランチューリングとランニングの秘密を解く

ランニングするアランチューリング
https://www.mentalfloss.com/article/70906/12-famous-people-who-have-run-marathons

ランニングシーンが挿入される場面

https://bcfan71.wordpress.com/2014/07/24/the-imitation-game-official-uk-teaser-trailer-gifs/

作中で二度挿入される印象的な場面、 アラン・チューリングのランニングシーンについて。

全体のお話はこちら。

本作で一番印象に残ったシーンが、たった二度差し込まれる走り込みの場面です。
アラン・チューリングは実際、 プロアスリートにも劣らないレベルで長距離マラソンを得意としていました。

 よくわかる参照ページ

作中で目を引くのは、その表情とペース感。 一度目はチームが集い初期設計をしているさなか(B1パート、作中19分頃)、 二度目は、尋問中の回想の中で差し込まれます(C6パート、作中1:36:00頃)。

https://whenisayrunrun.tumblr.com/post/157712872611/sometimes-its-the-very-people-who-no-one-imagines

これらは一連のシーンとして撮影されており、 物語の佳境へと向かう様を表しています。
B1パートではゆっくりとしたペース、表情も真剣で穏やかなものでした。 一方C6パートでは苦悶を浮かべるほどの追い込みです。単に天才たるインテリジェンスを筋肉で支えるため 遅筋と速筋をバランス良く鍛えていたという可能性もあるでしょう。

ただこの場面、この時系列上での配置を考えれば ランニングのシーンは彼の人生と暗号解読機の完成までを表しているようです。
ーーーその先には何があったか。

戦争を駆け抜けた果てに残された言葉は、「僕は戦争の英雄か、犯罪者か」というものでした。 夕日の沈む様を眺める姿には、尋問室の放心とも消沈ともつかぬ状態が重なります。

『僕はマシンか、人間か?』

https://whenisayrunrun.tumblr.com/post/157712872611/sometimes-its-the-very-people-who-no-one-imagines

アラン・チューリングがランニングを得意としていたことは、あとから調べればわかる事実。

彼が習慣的に走り込みをするようになったのは戦後、大学や研究所でコンピューターサイエンスの研究に没頭するようになってからでした。戦時中よりも余暇ができたからでしょうか。

時間軸がパズルのようにシャッフルされたこの作品で、それぞれのシーンは意図的に挿話されているはずです。

奇人ともとられるほどロジカルな彼でしたが、彼自身はモンスターにはなりきれなかったのではないでしょうか。作中では旧友クリストファーへの想いや執着にフォーカスされがちですが、もしかしたら機械への憧れさえあったのかもしれません。晩年、白雪姫になぞらえて毒林檎をかじった彼のことを、僕はモンスターマシンだとは思えませんでした。

それでも正しいと言うこと

C6、尋問室の回想の終わりに、彼は次のように語ります。

「戦争に勝ったのは神ではなく、僕たちだからだ。」

作中でアラン・チューリングは、自身が人間であり、人間として常軌を逸するような戦いに勝利を収めます。その栄誉があれど、彼は当時罪とされた同性愛を否定せず、その上で一貫して無罪を主張したといいます。実に彼らしい。彼は誰に怪物だと言われようと、犯罪者と罵られようと、一人の人間であることを止めませんでした。

アラン・チューリングは、自分が一人の人間であり、そのあり方が正しいと示しながら刑を受け、命を果たします。

A5パート、1:41:50。クリストファーの死を告げられた回想明けの背中が、どうしても忘れられません。

あとがき

僕は学問としての歴史が好きで、どうしても歴史上の人物に感情移入することはできません。

彼らには自身の思惑があり、事実があり、結果がある。それ自体を再現することができないからこそ、彼らは歴史の俳優でしかない。事実、本作のなかでも出来事はそのままに、決定的な脚色が加えられています。

ただ、アラン・チューリングの物語を現代に起こしたチームの、特にカンバーバッチの演技には、身を震わせるようなエモさを覚えます。ここまで散々テキストを連ねてきて、そうとしか言いようがない。なんであんな表情ができるんだ。お前ハリポタとかバリバリやってただろ。なんだその顔。今すぐ抱きしめたくなるよ。

第二次大戦の英雄を描いた、仮想現実的大作の名シーンにまつわるお話でした。

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