2021年、映画ファンの中にはパンデミック映画をなぞる人が多いんじゃないだろうか。
数ある感染モノの中で「コンテイジョン」は、かなりリアリティを切り取った作品。ハリウッディズム溢れる『アウトブレイク』より現実的な非常さに富んだ、感染から収束までの物語だ。
感染流行から2年を経て生まれた映画
公開時期は新型インフルエンザ流行から2年を迎えた2011年。
10〜40年の周期で流行するという新型インフルエンザの記録として生まれた作品といえる。
ちなみに検死のシーンが少しあるためグロ注意。冒頭で気分悪くなってもらうための『プライベートライアン』的な演出だから我慢ね。即死感染症モノとしては結構リアルなので心の弱ってる人も注意で。
感染症と社会のとまどいを描く
Contagion:感染[名]
一般に接触感染を意味し、空気感染はinfection.
物語は感染症をめぐる医療機関と人々の混乱を収めた、ソーシャルドラマとしての側面が際立つ。軍人やドンパチが出てこない分、医療関係者の描かれ方がかっこいい。”R-0(アールノート:実行再生算数)”などなど、当時から疫学に関して啓発的なところがある。一部の専門用語は映画の筋書きに大きく作用しないので、食らいついてく人以外はジュース飲んでてよし。
小難しい話がキャッチーに収まっている一方で、唯一の”R-0″という単語をゴリ押している印象も。今(2020年ごろ)になって見ると致死率などにはあまり触れないので少しだけフィクションみが強く感じられる。実際にのところ「実行再生産数」の方が国内ではメジャーだし、なんならそれすら自然に耳に入ることはなかったり。
なんとなく”ソリューション””イノベーション”的な抽象ワードとして使われているかんじ。第一感染のシーンを一瞬まで特定できるところも然り、ご愛嬌ね。
(※実際の議論でも実行再生産数はたいせつな指標)
「失われた春と夏はどうするの」問題
後半は暴動や都市崩壊などパニック映画っぽく。ロックダウンは本当だったよ。本当に怖いのは人間的なメッセージをよく表してる。
2020年まではパンデミック時のシミュレーションとしての側面があっただろう作品だけど、今となっては僕らの方が先を行ってしまっている。2021年でもなお光を放つ部分が、社会とひと(個人)のとまどいだと思う。
お姉ちゃんが発した「失われた春と夏はどうするの」これは本音の部分だよねぇ。
「とはいえ」と返すことはできたとして、2021年の僕らはお姉ちゃんに返す言葉を開発できていない。理屈ではわかっていても、もしかしたら理屈を抜きにしても、目の前の光っている日々に蓋をするのは苦しいもの。言いようのないもどかしさはどこに逃してあげればいいんだろう。
10年を経て、自室にて。
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