[パルプフィクション#2]ブッチ&レモンパイは属性的に主人公

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ブッチとレモンパイちゃんは救われるべくして救われる

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主人公とは思えない最後を迎えるヴィンセントと、八百長のオッズで一発逆転を決めて逃亡まで成功させたブッチ。もはや誰が主人公かわかりません。パルプはそういう作品なんです。

神にも悪にもすがらないブッチですが、何かと人には救われる星の元にあるようです。彼自身非常に義理堅く、祖父と父親、その友人たちが守り抜いてきた時計を大切に生きてきました。

加えて恋人との向き合い方も、アメリカンヒーローっぷりを発揮しています。レモンパイちゃんことファビアンとの語らいは、官能的で深い愛情の伝わるシーンですよね。ハリウッド映画おなじみの、ひとしきりブチ切れてから「悪い、気が立ってたんだ。お前は悪くない。」の流れも見逃せません。

こんな恋人たちが救われる、ハリウッド的なわかりやすい正義が描かれているのも、パルプフィクションのひとつの魅力です。

エズメラルダ・ヴィラ・ロボスという女性

試合会場を後にしたブッチは、ラジオを聞いて乗り付けてきたタクシーを捕まえます。このタクシードライバー、エズメラルダ・ヴィラ・ロボスの存在は、ブッチの命運に大きく影響を及ぼしています。

エズメラルダとはスペイン語で「エメラルド」を指す言葉。翠玉のように妖艶な雰囲気を帯びる女性ですが、エメラルドの石言葉には”希望”という意味が込められています。意味深なタクシーのシーンでしたが、彼女がブッチにとっての希望になったというのは間違いないでしょう。

パルプフィクションと性犯罪

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犯罪の限りを詰め込んだパルプでしたが、性にまつわる犯罪シーンってないよな?と思っていました。

ただよく考えると、ブッチとマーセルスの惨憺たるシーンについては、まごうことなき性犯罪。それも悪徳警官と監禁室を持った武器屋のグルという、おぞましい悪と言えます。男性へのレイプはアメリカでも横行しており、女性に対するものよりもさらに表面化しづらい傾向にあるそう。マーセルス・ウォレスが御用人であるブッチを放免にしてまでひた隠したこのシーンは、性犯罪というカテゴリーにおいてかなり象徴的な表現です。

ブッチは、それでも人を救う

苦悶の叫びをあげるマーセルスをブッチが見離さなかったのは、おそらく同情心からでしょう。彼は八百長の話を持ちかけられて複雑な思いもあったでしょうが、何もマーセルスを地獄に落としたいほど恨んでいるわけではありません。正義感を秘めたブッチにとっては、あの惨憺たる有様を看過できなかったんでしょう。

勧善懲悪にできた『パルプフィクション』

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家宝ともいうべき形見を大切にし、悪には眉を潜めながら、人を見捨てることにも躊躇するブッチ。別記事、「ヴィンセントとジュールスに訪れる奇跡」でも触れましたが、パルプフィクションでは善人が救われ、悪は酷い目を見るという勧善懲悪の構図がたびたび描かれます。

物語のラスト、恋人と逃避行を果たすブッチに比べると、ヴィンセントの死に際はあまりにもあっけないものでした。のんびりトイレから出てきたところで殺されてしまいかわいそうなところですが、悪党の道を突き進んできた彼にとっては因果応報といった結末。イイやつだけど、悪は滅びました。

ひるがえってブッチはどうか。八百長とはいえ約束を反故にしているので真っ白とは言えないかもしれませんが、彼は常に人間らしい道を選んでいると言えるでしょう。多くのメインキャラが交錯する群像劇ですが、主人公属性だけで考えるなら、ブッチは一番善人に近い人なのかもしれません。

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