「イミテーションゲーム」の構成
冒頭から奇妙な科学者然とした導入。基本的にはフラッシュバックを用いた回想録、いわゆるシャッフル構成の形をとります。
約2時間の長編ながら、各時代の緩急に沿った構成は息をもつかせません。当然ながらネタバレを含みますので、まだ作品に触れていない方はご了承の上で。
A:アラン・チューリング幼少期(回想)
B:エニグマ解読チーム(メインテーマ)
C:同性愛容疑の捜査
起<暗号解読チーム結成>
C1:戦後、アラン逮捕の直前
B1:暗号解読チーム結成
C2:戦後、アランの身辺調査
B2:戦時、解読機開発
A1:幼少期、いじめと親友
承<暗号機完成>
B3:戦時、クロスワード採用と戦火
A2:恋と暗号
B4:戦時、チーム転換とジョーン・クラーク呼び戻し
C3:戦後、スパイ疑惑
B5:戦時、不和と万能マシン、二重スパイ容疑、リンゴとジョーク
A3:秘密の手紙
B6:暗号機始動、ナチスの優勢、軍本部の中止命令、仲間の助け
C4:逮捕令状
転<イミテーションゲーム>
B7:婚約、同性愛の秘密
A4:渡せないラブレター
C5:尋問、イミテーションゲーム
B8:口説きと暗号、カーライル号攻撃の秘匿、スパイ容疑
結<顛末>
C6:尋問室の回想、ランニング
B9:チーム解散
C7:「僕は何だ。」
A5:クリストファーの死
C8:有罪判決、ジョーンの訪れ
B10:炎を囲んだエンディング
ミルフィーユ型の起承転結ストーリー
各パラグラフは、大体30分ごとに分けたもの。このように起承転結型に分けられる構成です。
構成数の少なさで比べてみると、やはりB8の濃厚さが際立ちます。
その分、承の構成では短時間のパートが錯綜していることを見て取れるでしょう。
注目したいのは、タイトルやパッケージからわかる”第二次大戦時、エニグマと闘った天才数学者”という内容が、ほとんど承のパートまでで住んでいること。
エニグマ解読機を作った天才というキャッチーな内容はすべて前半に、作品の顛末はアラン・チューリング自身と戦後の同性愛容疑など、彼の内面的なドラマに集約されています。
同時に、どのパートも各時代における転換期が据えられた、ミルフィーユ状の起承転結ストーリーです。難しいことを考えずとも、目まぐるしく移り変わる物語の行末を見ているだけでも面白い作品でしょう。