マリお姉さまの年齢が40代でも一向に構わん。
マリを新ヒロインとして扱う上で重要なトピック、年齢。
『シンエヴァ』にて世界中の本を読み漁ってることから想像できるように、マリの中身はかなりベテランだ。ゲンドウ(1967年生、当時48歳)の後輩で、飛び級したとしても10代半+セカンド後の15年+ニアサー14年。少なく見積もってもマリの実年齢は40代で間違いないだろう。
赤城りっちゃんだって19も年上のゲンドウに思いを寄せている。愛に年齢は関係ないさ。
以下は、マリの年齢に関する考察だ。後半の「イスカリオテのマリア」考察まで、メモがわりと考えてほしい。
マリの年齢を考える①『夏色のエデン』説
マリとその周辺の物語を考える手がかりとして、漫画版Extra Stage『夏色のエデン』が挙げられる。いわゆる“
マリとその周辺の物語を考える手がかりとして、漫画版Extra Stage『夏色のエデン』が挙げられる。漫画版エヴァ限定版14巻に特装された読み切り、いわゆる“貞本エヴァ”だ。舞台は1998年の京都大学。碇ユイ・六分儀ゲンドウ(ともに旧設定の姓)・真希波マリが、冬月教室に在籍していた時の物語だ。語り部のマリは、飛び級入学した16歳。貞本エヴァの舞台設定では1982年生ということになる。
E計画の初期段階に携わった人間であるため、マリは「裏コード」などを熟知していると見られる。
とはいえ『新劇』ではユイが綾波姓になる などのリビルド設定があるため、ある程度のズレがあってもおかしくない。
マリの年齢を考える②「写真の女」説
シンジ幼少期の写真に映り込んでいるお姉さん説もあるが、個人的には周りにモブがいすぎて違うと思っている。今後の考察材料としても、念の為ここに付記しておく。
マリの年齢を考える③「真希波シリーズ」クローン説
(2021年9月加筆)
シンエヴァまで鑑賞した人であれば、マリの年齢の謎についていくつかの仮説を考えることだろう。すなわち真希波・マリ・イラストリアスが、綾波シリーズ・式波シリーズ同様のクローン体であるという可能性だ。この場合、②のお姉さんなど年のいった人間がオリジナルであるという話も成立しうる。
特筆すべきは、マリ(真希波シリーズ)が記憶や知識、経験を何らかの方法で継承している可能性だ。
彼女は60年代の歌謡曲を好む。語学に堪能で、エヴァや補完計画の事情にも明るい。『シン』ラストを見るにシンジより少し年上のようだが、40歳以上というのは考えがたい。
彼女が前世代から記憶や精神など、魂だけを受け継いでいると考えれば辻褄が合いそうだ。『破』でエヴァに初めて搭乗しつつ、エヴァの呪縛を受けていることも成立する。いささかチートっぽいが、この超人性こそがマリの持つ大きな役割にも繋がってくる。
-マリはどう考えても『フリクリ』のハル子- 株式会社カラーの製作チームが公開したラジオでは、マリは『フリクリ』に登場するハルハラ・ハル子と限りなく同じキャラクターだと語られている。 この逸話は、オタキング岡田斗司夫の「マリは庵野監督にとっての安野モヨコだ」という説にカラーが反発したものだ。出演者は苦言を呈しつつ、「私たちからするとどう考えてもハル子」と述べている。 『フリクリ』は2000年にリリースされたOVA作品。監督は鶴巻和哉、キャラクターデザインを貞本義行が担当している。
冬月が発した“イスカリオテのマリア”という名前
エヴァという作品は、すべての物語に目を通してもなお数々の謎を秘めている。その点でマリは、めいた筋書きとシンジの成長を通した創世記、この二つの面を知る数少ない人物だ。
冬月がわざとらしくも発した“イスカリオテのマリア”という言葉は、マリの性質を物語の内と外から表している。
イエスを裏切った12番目の使徒「イスカリオテのユダ」
生前のイエスを裏切った12番目の使徒(弟子)が、カリオテ村のユダである。作中では、ゲンドウ・冬月、あるいは碇ユイも含めたのちのNERVチームを裏切った離脱者として用いられている。
ユダは、当時のユダヤ教に内通して異端者のイエスを密告したとされる。エヴァの世界では狡猾だとか、悪辣だとか、それほど恣意的な見方はないはずだ。冬月にとって「裏切り者め」くらいの軽口として用いたのだろう。
一方でユダの裏切りは、その未来さえ知っていたイエスによる「裏切りの神秘」だという見方もある。エヴァの物語に置き換えてみると、結果論ではあるが、マリがNERVチームを裏切ることで成立した神話だと見ることもできる。
イエスの死と復活に寄り添った「マグダラのマリア」
マグダラのマリアは「罪深い女」と呼ばれ、イエスから過去の罪を許された信徒だ。イエスの死を見届け、復活を見守ったとされる。
過去の罪を悔い改めとされる「マグダラのマリア」の有り様は、ややもすれば碇ユイへの想いとシンジへの態度にも重なる。シンジの成長と創世を最後まで見届け、付き添った人としてのメタ的なネーミングだろう。
ちなみにマグダラのマリアはイエスの母であるとする説や、生前の妻とする説など、多くの見方が議論されている。カップリング説も含め、マリの立場はキャラ設定から見ても多義的であるべきだ。
使徒に順ずるもの、“亜使徒”としてのマリア
(2021年9月加筆)
先の要素を総括して、僕はマリが使徒に近しい存在であるという可能性を考えたい。
東方正教会において、マグダラのマリアは「亜使徒」という位置付けにある。「使徒に等しい働きをしたもの」「使徒に次ぐもの」とされており、西方教会でいうところの聖人的な存在だ。
シンエヴァでもマリは使徒に近しい力を見せている。彼女はシンジのDSSチョーカーを外し、懐にしまい込んだ。その様は第一使徒カヲルにも似たところがある。北上ミドリに言わせれば、彼女は「使徒っぽい何か」なのだ。
ややもすれば、レイという肉体的クローンと対をなす、ユイの精神性をトレースした存在と言えるかもしれない。だからこそ恋人でも母親でもない役割を担えたのだ。そう考えるとぽっと出の女がレイやアスカを差し置いて物語を締めくくってしまったのも合点がいく。