エヴァンゲリオン劇場版(シンエヴァ)

「なんてことはなかったわ」

四半世紀にわたる大作、満を辞しての千秋楽。
激情的に、それでいてあっけなく幕が降りる。
Clubhouseで熱狂できるならぜひ乗ってほしい。

なお、本作品群は完全にアートであり、その本質および所感の在り処は見る人それぞれに依存することを留意ね。

本作最大のテーマは、「終わり」
繰り返される諸行無常にアンノくんが突きつけた「終わりでーす」。エヴァたちが破壊される卒業式シーンは、その象徴として用意されたものだと思う。

この作品に心奪われた人はきっと、その年月に関わらず思考や思いの量に応じて、大きな喪失を体験する。

日常へ重なったエヴァはこれからも愛されるけど、核になる熱狂ははかなくも抜け落ちてしまうよね。オチてしまったエヴァは、きっと同じ世界線では続かないんだ。

それは逃げ恥ロスのような目の前からの喪失ではなく、ずっと僕らの頭上に浮かんでいたものがふと風に溶けていってしまうような、式日の感慨だと思う。

返す返すもエヴァンゲリオンという作品に終止符を打てという方が「できるわけないよ!」という話。確かに数多のエヴァファンの前で殺害予告までされてなおオチを示せという方が難題だ。

シンジくんは作中における神の子であり、まごうことなく庵野監督の代理人だ。だからこそ彼自身が無関心なようで、あるいはそんなフリをして、終わりの決断をとったのかもしれない。

アツさで言えばシン2号機のシト化シーンが最高潮。エヴァ・アクションシーンの権化ともいえる。新劇のアスカの代名詞は「ゴメン!2号機!」

アスカがケンケンの家で横になってるシーン、パンツと骨盤前面のスキマを描いているところにとてつもないこだわり。

アンノくんの終わりたいエネルギーをひしひしと感じる。現実と虚構が折り重なった世界で、僕らは名残惜しくても学び舎を出ていかなくてはいけない。そんな、アンノくんが生み出した社会現象に対する一方的な終わりの宣言なのだ。

卒業のように無理やりで、華々しくもあっけなく形式的。あるべきだろう場所に落ちた四半世紀の物語は、もしかすると、”なんてことはなかったわ”

たおやかな喪失感が今もまだ残ってる。

終わり!ハイ!いいね、おしまい!!おやすみー!はーーい!おつかれしたー!

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